新刊予告 作者の言葉 
投資家の皆様へ レイダーズマネージメントグループ 代表 野川 

1. はじめに

 私はレイダーズマネージメントグループの代表として、これまで投資家の方々を対象に、どのように相場を売買するかについて、数多くのセミナーを行ってきました。また同時に米国のCTA(商品投資顧問)であるAltemis Asset Management Ltd.の社長でもあり、EdgeTraderというチャート分析ソフトを製作した、インベストメントテクノロジーズ(株)の社長でもあります。

 私の行っていることに大きな矛盾があると感じる人もおられるでしょう。「なぜ儲かる方法を他人に公開するのか?」という疑問は、正直なところ私も他の相場関連の本の著者に対して持っているものです。しかし私は過去のセミナーにおいて、短絡的に儲けられる方法をお教えしてきているわけではありませんし、この本においてもそれを公開するつもりはありません。私が公開するのは、相場に対する考え方と、相場を学習するための方法論です。なぜなら最終的に相場で儲けられるかどうかは、あなた自身の問題であり、私の問題ではないからです。
 こういう突き放した言い方をすると、無責任に聞こえるかもしれませんが、実際にそうなのです。あなたが相場で儲けられるかどうかは、あなたの問題でしかないのです。あなたが本気で取組む気も無く、ただ単に最後の答えだけを求めているとしたなら、私にはどうすることもできません。
私には医者の知り合いが大勢いますが、彼らは全員口を揃えてこう言います。「医者は病気を治せません。病気を治すのは患者さん自身の力です。医者はただそれを手伝ってあげることしかできないのです」

2.日本版タートルズ

 私の尊敬するトレーダーにリチャード・デニスという人がいます。今から20年前に私が先物業界に入ったとき、彼の存在はまるで神のようでした。市場は彼を中心に回っているかのようでした。しかし私が彼を尊敬している理由は、彼が単に偉大なトレーダーであったからではありません。偉大なトレーダーなら、長い歴史の中に沢山存在しています。しかし彼は他のどの偉大なトレーダーもできなかったことを成し遂げました。彼は、彼が「タートル」と呼んだ生徒たちに売買技術を教え、そしてタートル達の多くはデニスと同様の素晴らしい成績を残し、その後米国の商品投資顧問のトッププレイヤーとして巣立っていったのです。
 これはあまりも有名な話なので多くの方がご存知だと思います。私もセミナーの冒頭で必ずこのエピソードを紹介しています。「マーケットの魔術師」にはリチャード・デニス自身が、そして「新・マーケットの魔術師」には彼のパートナーであったウィリアム・エックハートが登場し、デニスの教えたタートルについて書かれています。この2冊を読まれることを私は強くお奨めします。私の本は読まなくても結構ですから、是非この本を読んで下さい。この2冊はトレーダーのバイブルであり、魂そのものなのです。

 私は3年間に渡りあることを試みました。それは「日本版タートルズ」と言ってもよいことでした。レイダーズ特別会員と私が呼んだ、人数限定の会員に対し、まずこの本に書かれている相場に対する考え方を伝え、それから売買技術をレクチャーしました。その後は、毎週のマーケットレポートを通じて、目の前の現実の値動きの中で、実際に売買を繰り返していくのです。2ヶ月に一度は、更に詳細な売買技術を教えるために、勉強会を開催しました。
 最初は不安でした。単なる小手先の技術ではなく、マーケットが存在する限り永遠に通用する本質的な考え方を、相場初心者の方々に本当に伝えることができるのだろうかという不安がありました。そして最もためらったのは、それをどのように伝えるかということでした。
 最初の頃は、自分が理解していることを全てうまく伝えようとしたのですが、かえってそれが悪い結果となりました。特別会員の中に、考え方の理解ではなく、最後の答えのみを待つ依存症の方が増え、私にも強いストレスが溜まっていきました。そしてそれを反映するかのように、相場もうまくいかなくなりました。
 そうなってくると、特別会員の中でも、最後の答えのみを求めていた方々は去っていきました。一時は非常に情けない気持ちになりましたが、ある意味でそれは私にとって良いことでした。その時点で新たな会員の受け入れをやめて、そのような状態でも本質の存在を感じ取って残って頂いた会員の方のみを相手に、完全にクローズでレクチャーを続けていきました。
 こうして良い意味での開き直りができてきますと、私は本来あるべき姿に戻るべきであることに気付きました。それは相場の本質を深く見つめ、相場に対し真っ直ぐに対峙することでした。相場はまるで禅問答のようなもので、難しく問えば難しく答え、易しく問えば易しく答えてきます。それまでの私は、本来単純な相場を、あえて難しくしてしまっていたようです。これでは伝わるべきものも伝わりません。そのことに気付いてから、私の相場に対する接し方が全く違う次元のものへと変わっていったのです。

 あるとき私は、相場が料理に似ていることに気付きました。美味しい料理にとって大切な要素は何かと問えば、優秀な料理人であれば必ず「良い素材」と答えるでしょう。そして次に大切なのがもてなしの「心」です。
 腕の良い料理人であれば、素材の良さを損なうことなく、素材の持つ旨みを更に引き出すことを考えて、わずかに手を加えるだけでシンプルに調理します。食べる人のことを第一に考えて、皿の中の自己主張は必要最小限に留めます。しかしあまり腕の良くない料理人は、自分の技術をひけらかすために様々な加工を施した結果、やりすぎてしまいます。素晴らしい素材の前には、料理人の身勝手な自己主張などは邪魔になるだけなのですが、残念ながら世の中の大半の料理人が、自分の欲望をコントロールできないために、折角の素晴らしい素材を台無しにしてしまっています。
 同じことが相場にも言えます。素晴らしい素材(優位なトレンドや状態)を発見したら、それをシンプルに料理すれば良いのです。自分の技術を見せびらかして、折角の素材の良さを殺しては駄目なのです。良いトレンドがあれば、単純にそのトレンドが無くなるまで乗り続ければ良いだけなのに、どうしてごちゃごちゃと売ってみたり買ってみたりをするのでしょうか。折角の素晴らしい素材を台無しにして、易しい相場を難しくしているのは、欲望をコントロールできない自分自身の「心」なのです。

 またあるとき、相場は格闘技にも似ていることに気付かされました。例えば柔道の達人であれば、必ずその人なりの得意技をひとつ持っています。対戦相手は当然そのことを知って防ごうとしますが、その得意技が相手の防御を更に上回るものであれば、必ず相手を倒せるのです。
 武道の達人になればなるほど、この「ひとつの得意技」が顕著になります。達人ですから、実際にはどの技でも人並み以上にこなせるはずです。しかしその得意技にこだわり続けるのは、強い相手と戦って勝つには、相手よりも強いたったひとつの技だけで十分だからです。このことは逆に言いますと、その技だけを何度も何度も練習してきたからこそ、それだけ強い得意技を習得できたとも言えるでしょう。こうした裏づけがあるからこそ、その技が掛けられる状態に持っていきさえすれば、確実に勝てるという自信につながるのです。
 昔から成功の秘訣は「運、鈍、根」と言われます。「運」は理解できます。「根(根気)」も理解できます。しかし「鈍」はずっと長い間理解できませんでした。私の頭の中では「鈍」ではなく「鋭」ではないかという思いがありました。しかし相場の学習を続けていく内に、達人の得意技の習得過程と同じで、実は色々なことができるのに、あえてひとつのことを実直にやり続けることが、成功への近道であることに気付きました。
 鋭敏なカミソリは、薄い紙はするどく切り裂きますが、巨木を倒すことはできません。巨木を倒すには、紙を切ることもできない鈍い切れ味の斧でなければならないのです。我々は目先の小さな勝利を求めている訳ではありません。巨木を倒すこと、即ち最後に相場の勝利者となるには、愚鈍に思えても、(その技にとっての優位性が存在する)その状況さえ来れば必ず勝てると確信できる、たったひとつの得意技を徹底的に習得することなのです。

 このようにして、教えているはずの私自身が、相場からあるいは特別会員の方々から教えられながら、3年間という期間が過ぎていきました。この間、ウィークリーレポートと勉強会を繰り返し、精神的にも技術的にも特別会員の方々は大きく成長していきました。
 特別会員の方々と共に学んだこの3年間は、私にとって長くもあり短くもあった3年間でした。私が口癖のように彼らに問うたのは、「何故それは起こるのか」ということです。原因があって結果がある、過去があって未来がある。この原理原則は、相場だけでなく、世の中の全てにあてはまるものなのです。それは言うならば普遍の真理でもあります。その普遍の真理の存在に気付き、それが自らの心の中に芽生えてきたときに初めて、自分自身の相場を見つけることができるのです。

 最後の2ヶ月間は、リアルタイムの卒業試験を行いました。これまで私が送っていたレポートと同じ形式で、私宛にレポートを書いて頂き、その内容をチェックしていったのです。銘柄選択、リスク管理、売買戦略、戦略に従って使用する売買技術、エントリー、損切り、利食い。これらの内容を全て自分で考え、ウィークリーレポートを作成して頂きました。長い2ヶ月間だったと思います。しかしこの卒業試験に参加された特別会員の方々の、なんと8割以上が利益を得ることができたのです。しかも、そこで選択している銘柄も、戦略も、技術も全て異なっているのです。つまり彼らはやっと、自分の相場を見つけることができたのです。

3. 群れから抜け出す

 投資家の行動は、群れをつくる動物の行動と似ています。群れをつくる動物は弱い動物で、常に食べられる立場にあります。しかしその弱い動物達が大きな流れを作り出します。そしてその群れの周りには、常にその弱者を食べようと狙っているライオンやチーターといった強い動物がウロウロしています。
 相場の世界で勝者になるための第一歩は、食べられる運命にある弱者の「群れ」から抜け出すことです。群れの中に留まっている限り、食べる側ではなく永遠に食べられる側にあることになります。
 ではどうすれば群れから抜け出せるのでしょうか。それは自分の相場を見つけることです。目の前にある相場はひとつに見えて、実は人それぞれにとって様々な存在なのです。私には私の相場があるように、あなたにはあなただけの相場が存在しています。そのことに早く気付くことです。誰かに何かを頼っている間は、自分の相場は見えてはきません。どうせ最後は自分ひとりで決めなければならないのです。最初から最後まで自分で考え、悩み、苦労し、そして自分だけの相場を見つけようと努力してみることです。そういう努力をあきらめずに続けていると、これまで聞こえなかった相場の呼吸や足音がやがて聞こえるようになってきます。あなたの相場は、実はあなたのすぐ側に存在していて、あなたが見つけてくれるのを息をひそめて待っているのです。
 自分の相場を見つけたとき、いつのまにか自分自身を外から見つめている、もうひとりの自分の存在に気付くでしょう。そうなったときに初めてあなたは勝者の仲間入りを果たせるのです。

4.戦上手は負け上手

 相場は現代の戦争です。兵士の替わりにポジションを動かし、戦略を駆使してお金を奪い合います。相場は純粋に人の欲とエゴのぶつかりあいです。自分の勝利は、誰かの負けによってのみ成り立ちます。私が相場の世界で見てきたものは、損ばかりしている大勢の大衆投資家と、優位性を掴んで大きな利益を上げる一握りの人間、そして確実な手数料収入を得ているブローカーです。
もし全くリスクの無い安全な道を選択したいのなら、相場なんかに手を出すものではありません。あるいは趣味と実益を兼ねてなどと甘いことを考えているのであれば、それは大きな間違いです。趣味にはお金を遣うものであって、お金を稼ぐものではありません。本気で相場からお金を稼ぎたいなら、取るべきリスクをきちんと取り、果敢に攻め、そして上手に負けることです。
 大衆投資家が損ばかりしているのは、上手に負けることを知らないからだと思います。古来から、戦上手は負け上手です。相場の世界において不敗神話など有り得ません。利益を上げ続けているように見える人にしても、実は小さな負けを何度となく繰り返しています。大切なのは最終的な損失と利益のバランスであり、目の前のたったひとつの小さな勝ち負けにこだわるべきではないのです。負け戦を上手に負けておけば、また次があります。いかに負け戦で兵力を温存しておくかが、大将の腕の見せ所です。そして勝ち戦になったときには、とことん勝てば良いのです。もし勝てる戦になったにも関わらず攻めないとしたら、それは単なる臆病者です。根拠のない勇気によって負け戦で無駄死にするのと同じくらい、臆病風に吹かれて勝ち戦を逃すことは、敗者への最短距離なのです。

5.相場に正しくあろうとする

 相場は人生の縮図です。そこは欲望の渦巻く世界です。しかし皮肉なことにお金を儲けたいという欲があればあるほど、お金を失っていきます。勝負の世界において共通しているのは、勝ちたい、儲けたいという欲が、負けにつながるということです。相場の世界で勝利を収めるには、勝とうとするのではなく、相場に対し正しくあろうとすべきなのです。
 「何故それは起こるのか」これこそが相場における永遠の命題です。相場を単にお金儲けのための手段としてしか捉えていないとしたなら、それは何と虚しいことでしょう。勝って何かを失う人もいれば、負けて何かを得る人もいるのが相場です。相場に正しくあろうと努力してみて下さい。それは自らの内面に向けた探求の旅でもあります。その先に、きっとあなた自身の相場が待っているはずです。

 この本では、あえて細かな技術に付いては触れていません。先に書きましたように、大切なのは相場の本質を見極めること、そしてそこに存在するいくつかの優位性を見出して、自分の得意技で勝利を収めることです。良い素材が見つかったら、それをシンプルに調理してみて下さい。きっと驚くほど簡単に、良い結果が得られるはずです。

 この本を読まれて、あなた自身の相場を、そしてあなた自身の素晴らしい人生を見つけるための、価値ある最初の一歩を踏み出されることを、心から祈っています。
  書籍紹介
 「フューチャーズJapan」に執筆連載中  申込みはこちら
  セミナービデオ紹介
 「世界のトップトレーダー達の運用手法を学ぶ」基礎編全6巻(1巻15000円)
・リスクマネージメント入門(第1回)
・トレンドの定義の仕方(第2回)
・エントリー&エクシット(第3回)
・相場の構成(第4回)
・建玉法(第5回)
・売買に至るまでのプロセス(第6回)
 「RMG短期売買法入門」全4巻(1巻15000円)
 「トレードで成功する為の10項目」(10000円)
 「成功するトレーダーになるためのモデル」(10000円)
 「RMGマンスリービデオセミナー」(毎月1回、1巻5000円)